営業時間:10時~18時

03-5340-7861

FAX:03-5340-7862

コラムColumn

敷金の基本的な考え方 敷金でひけるものとひけないものの基本的な解説

前田 祥夢
弁護士法人東京新橋法律事務所
記事名とURLをコピー記事名とURLをコピー
敷金の基本的な考え方 敷金でひけるものとひけないものの基本的な解説

引っ越しシーズンが近づくと、多くの人が敷金返還に頭を悩ませます。敷金は何に使われるのか、どのような条件で返還されるのか、この記事では、敷金の基本的な考え方から、具体的なケースにおける敷金の取り扱いまでを詳しく解説します。通常損耗や経年変化にもとづく修繕費は敷金から引けないのか、賃借人が負担すべき修理費用はどのように決まるのかを記事通して知ることができます。

※この記事は2022/01/07にラクーンレントメルマガで配信したものを加筆修正したものです。

敷金の基本的な考え方

「通常の使用によって生じた損耗(以下「通常損耗」といいます。)や建物の自然的な劣化や損傷(以下「経年変化」といいます。)についての修繕費用」は、敷金から引くことが出来ないのが基本です。通常損耗や経年変化の発生は、家を借りて住む以上いわば当然に発生するものであり、そのような損傷の修理費については、家賃の中に織り込まれている、という考え方です。

そのような通常損耗や経年変化の範囲を超えた損傷の修理費について、賃借人の負担、つまり敷金から引き得るということになります。引き得る、というのは、そういった損傷であっても、賃借人に非がない場合は、敷金から引けないという事です。なお、通常損耗や経年変化の範囲であっても、賃借人負担の特約が ある場合は、賃借人の負担となり得る、つまり敷金から引き得るという事になります。

敷金においてなにが引けてなにがひけないのか 具体的対応

では、具体的に何が引けて何が引けないのでしょう。よくある損傷について、それぞれ見ていきます。

明渡時のクリーニング費用

通常の使用によって生じた分については賃借人負担にできない、という考え方から、社会通念上、通常といえる程度の清掃(常識的な範囲の掃除)が行われており、賃借人の責めに帰すべき汚損(賃借人の不注意による汚れ)等が残っていなければ、それ以上に、専門業者によるクリーニング費用まで、敷金から引くことは難しいです。

賃借人の責めに帰すべき汚損とは、タバコ等のヤニによる変色や、ペット飼育に伴う汚れ、換気扇等の油汚れやすす、水まわりの水垢やカビなどが典型的です。

なお、あくまで明渡時に想定される「原状回復」に必要な修理費を、敷金から引き得るという話であり、「グレードアップ」のための費用については、敷金から引き得ないので、注意が必要です。

壁紙などの経年劣化品の取換代金

賃借人の不注意にもとづく損傷等によって生じた取換代金については、敷金から引き得ます。しかし、引く金額については、注意が必要です。というのも、修理によって、通常損耗や経年変化による損傷部分も補修されるところ、それらによる損傷部分の修繕費用については、前述の通り、賃借人はすでに家賃によって支払っているのです。

つまり、長く入居すればするほど、賃借人は、家賃として通常損耗や経年変化の補修費用を沢山負担してきていることになるのです。そのため、修理費全額を、敷金から引けるわけではなく、あくまで通常損耗を超えて、賃借人の不注意により生じた損傷部分に相当する補修費用のみ、敷金から引けるということになります。詳しくは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)(国土交通省住宅局)」を参照ください。以下、いくつか具体例を検討しますが、あくまで個々の事案によって、同様の補修でも結論が変わり得ることはご了承ください。

壁紙の汚損

結露など、生活上を得ないものは敷金から引けない可能性が高いです。反対に、賃借人の不注意で汚したものは敷金から引けますが、上記のように金額面では注意が必要です。入居期間が長いほど敷金からは引きにくくなります。

フローリングの汚損

引っ越し作業で誤って傷つけた、生活の中でフローリングを汚した。このようなフローリングの汚損については注意が必要です。結論として、フローリングの一部を張替えるのか、全体を張替えるのかで敷金から引ける金額が変わってきます。

一部張替えの場合は、入居期間を考慮せず、敷金から引けるのに対し、全部張替えの場合は、入居期間を考慮して、敷金から引けることになります。なぜならば、一部のみを張替える場合、フローリングが言わばつぎはぎの状態になると思います。この場合は、フローリング全体の価値があがったとは言えない、つまり通常損耗分が補填されたとは言えないので、その修理費を賃借人が負担しても、家賃との二重負担をしたことにはならないのです(ここは理解が難しいところなので、結論だけで結構かと思います。)。

参考
住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版) – 国土交通省 (mlit.go.jp)

ご質問・ご相談など、お気軽にお問い合わせください

お電話でのお問い合わせ

03-5340-7861

営業時間:10時~18時

お問い合わせ