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コラムColumn

実際の判例をもとに学ぶ追い出し条項とは 2022年12月12日の最高裁での裁判事例とあわせて解説

前田 祥夢
弁護士法人東京新橋法律事務所
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実際の判例をもとに学ぶ追い出し条項とは 2022年12月12日の最高裁での裁判事例とあわせて解説

この記事では、最高裁が「追い出し条項」や「無催告解除」を違法とした判例に焦点を当て、賃借人と家賃保証会社にどのような影響が出るのかを解説いたします。

またあわせて高裁と地方裁の判決をふまえた解説もございますのでこちらもご参考ください。

※この記事は2022/12/12にラクーンレントメルマガで配信したものを加筆修正したものです。

追い出し条項とはそもそもなにか(編集部追記)

追い出し条項は、賃借人と家賃保証会社が契約する際に設けられる、特定の条件に適合した賃借人に対して物件の明け渡されたものとみなされる特約です。

この条項が発動する条件を賃借人がクリアした場合、賃借人が異議をいうまでは物件の退去が確定したと扱われ、部屋に残った家具や道具を取り除くことが可能とされています。

ついに決着‼ 注目の判例( 消費者契約法12条に基づく差止等請求事件)

昨年12月(2022年12月12日)、業界注目の訴訟に、ついに決着がつきました。

①一定の条件下で、家賃保証会社は、賃借人が賃借物件を明渡したものとみなすことができる旨の規定、及び

②家賃保証会社は、賃借人が3か月賃料を滞納した時は、原契約を無催告で解除できる旨の規定、の2つの規定の適法性につき、最高裁が判断を下したのです。

①の一定の条件とは、
(1)2か月以上の家賃滞納があり
(2)手段を尽くしても賃借人と連絡が取れず
(3)電気やガス等の状況から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ、かつ
(4)賃借人が賃借物件を再度利用しない意思であると客観的にみてとれる事情があるとき
(以下(1)~(4)を「4要件」といいます。)というものです。

①は、旧来「追出し条項」と呼ばれていたものに近い性質の規定ともいえます。

家賃保証会社による明渡判定

まず、①について。これまで、一審である地裁と、二審である高裁の判断は、4要件を満たす場合に、未だ賃借人の占有があると考えるか否かによって、結論が分かれていました。
結論としては、一審である地裁は違法、二審である高裁は適法との判断です。

理由として、地裁は、4要件を「賃借物件を現実に使用していないことを伺わせる一定の要件」と判示しているのに対し、高裁は4要件を「(4要件を満たす場合は)賃借人が賃借物件の使用を終了し、賃借物件に対する占有権が消滅しているものと認められる」ものであると判示しました。
また、大阪高裁は、この規定は4要件を満たす場合に、原契約を終了させる権限を保証会社に付与するものであることを前提に、4要件を満たす場合は、賃借人としても、原契約の終了を希望又は予期しているであろうから、原契約終了により、賃料支払義務が消滅することなど、①の規定は、賃借人にとってのメリットも存する旨を述べていました。

この点、最高裁は、結論、①の規定は、消費者契約法10条に抵触する違法な規定である旨判示しました。①の規定に関し、原契約を終了させる権限を保証会社に付与するとの大阪高裁の解釈を否定するとともに、前記4要件はその内容が一義的に明らかでない(文言の意味が不明確)こと、及び賃貸借契約書の当事者でもない保証会社によって賃借人が建物を使用できる権利を一方的に制限できることの不当性を理由に、同法に抵触すると判示しました。

家賃保証会社による原契約の無催告解除について

次に、②についてです。この点、大阪高裁は、過去の判例を踏まえると、②の規定は、賃借人が賃料を3か月滞納し、かつ催告をせずともあながち不合理でないときに、保証会社は、無催告で解除できる旨の規定であると解釈し、消費者契約法に抵触しないと判示していました。

つまり、②の規定の文言としては、賃料3か月分の滞納としか書かれていないものの、過去の判例を踏まえると、②の規定は、賃料3か月分の滞納に加えて、「催告してもあながち不合理とは認められない時」、という条件も暗に規定したものだと解釈した上、それであれば、賃借人の利益を一方的に害するものではないから、消費者契約法に反しないと考えたのです。

なお、大阪高裁が参考にした判例とは、賃借人から賃貸人に対し、賃料の滞納があるときに、賃貸人が無催告で解除できる場合があるとする判例です。

対して、最高裁は、このような大阪高裁の判断を正面から否定するような判断を下しました。
まず、②の規定については、大阪高裁の上記のような解釈はできないと判示しました。

理由として、そもそも②の規定は、賃貸人ではなく保証会社が解除できる旨を定めている点や、保証会社が賃貸人に保証債務を履行していて、賃貸人として賃料の未収が生じていない場合を含む点で、大阪高裁が参考にした判例と同様に考えることはできないと考えました。

つまり、賃貸人と賃借人の2者間における判例を、保証会社も加えた3者間の問題についてそのまま参照することは適切ではないと考えたのです。そして、最高裁は、②の規定は、文言以上になんらの限定(「催告しなくてもあながち不合理でない」など)も加えた規定ではない、文言そのままの規定だと解釈しました。

換言すると、最高裁は、高裁に比べて、同規定を使って解除できる場面を広く捉えたのです。
そして、その解釈を前提に、同規定は、賃貸借契約の当事者ではない保証会社が、その一存で、賃貸借契約を一方的に無催告解除できる点で、賃借人に重大な不利益を与えるおそれのある規定であるとし、消費者契約法10条に抵触すると判断したのです。

いかがでしたでしょうか。簡単に明渡しを実現できない以上、入居審査を厳格にする等の対応も、検討されるかと思います。しかし入居審査を厳格にすると、独り身の高齢者など、ますます家を借りるのが難しくなることが考えられるでしょう。そういった観点からも、本判例の是非は検討、議論されるべきかと思います。

編集部追記:今回のまとめ

最高裁判所が賃借人と家賃保証会社に関する追い出し条項と原契約の無催告解除についての判決を下しました。
追い出し条項は特定の条件下で賃借人が物件を明け渡されたものみなされる規定で、今回これが違法であると最高裁は判断しました。条件は曖昧で一方的であり、消費者契約法に抵触するというのが主な理由です。

一方、家賃保証会社が、賃借人が賃料を3ヵ月滞納した場合に、原契約を無催告で解除できる規定についても、最高裁はこれが賃借人に不利であり、消費者契約法に違反すると判断しました。
この判決により、家賃保証会社の権限が制限され、今後は入居審査が厳格化する可能性もあり、特に高齢者などにとって家を借りるのが一層難しくなる恐れがあります。

最高裁判例はこちら
裁判例結果詳細  消費者契約法12条に基づく差止等請求事件| 裁判所 – Courts in Japan

高裁と地方裁の判決をあつかった解説はこちら

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